「りさ子のガチ恋?俳優沼」読みました ~「ガチ恋」の歴史、推しとファンの関係~
小説「りさ子のガチ恋?俳優沼」を読みました。
タイトルのパンチと舞台版の感想を見て買ってから1か月位寝かせてたのですが、
読み始めたら止まらなくなって一気に読みました。
面白かったので感想などなどをば。
「ガチ恋」や「2・5次元」についてなど、
作品以外の補足が長々と書いてます。すみません...(ネタバレありです)
「りさ子のガチ恋?俳優沼」あらすじ
26歳、彼氏なし。OLりさ子の趣味は舞台観劇。
大好きなイケメン俳優しょーた君を追いかける日々。
彼が出演中の2.5次元舞台『政権☆伝説』に大ハマリ中。
最前席で全通。グッズもコンプ。そして高額プレゼント。
「がんばってる姿を観られるだけで幸せ」そう思いつつも。
彼のちょっとした「特別扱い」に心ときめいていた。
ある日。ネットでしょーた君に彼女疑惑が持ち上がる。
彼との匂わせを繰り返す女が気になり暴走するりさ子。
エスカレートする迷惑行為。その行きつく果ては……。
俳優とファン――「この関係で、私の気持ちは届くのかな?」
演劇業界の闇に切り込む、見て見ぬふりをしたかった愛憎劇。
今、演劇界で一代ムーブメントを起こしている、
『2.5次元舞台』という舞台ジャンル。
論文も幾つか書かれてるみたいです。
『日本の創作ミュージカルの新潮流としての2.5次元ミュージカルに関する一考察 : その展開とカテゴリー形成をめぐって』
2.5次元の魅力は、2次元のキャラクターが、
現実に現れて動いて喋るという魅力もありますが、
もう一つの魅力は、そのキャラクターを演じる演者の成長を応援できるシステムが、沢山の人の心をつかんでいるのかと思います。
2.5次元舞台のブームの火つけとなった、
再現率の高さだけでなく、出演する俳優達が、
初舞台から、どんどんと成長していく姿、そして「卒業」していくのを見守り、
支えるコンテンツという仕組みを作り出し、若手俳優やクリエイターの登竜門となった事が大成功の要因と考えられています。
(と、いろんなところに書いてました。あまり詳しくはないです...すみません...)
「りさ子のガチ恋?俳優沼」は、
そんな2・5次元で活躍する舞台俳優に「ガチ恋」になってしまった女性と
「ガチ恋」される俳優視点で綴られる話です。
「ガチ恋」とは、何なのか
ガチ恋
読み方:ガチこい「ガチの恋」、すなわち、冗談めいた意味合いではなく真剣に恋愛感情を抱いた様子を述べる言い方。とりわけアイドルやタレントに(ファンの域を超えて)本気の恋愛感情を抱いてしまった状況を指して用いられることが多い。
いわゆる二次元が好きな人の「画面に入りたい」
「○○っていうアニメの○○と結婚したい」という
二次元への恋心ではなく、三次元への恋心が主な対象の様です。
そう、実在している人間(推し)への、本気「ガチ」で「恋」しているファンの事。
自分の推しへのファンとしての「応援」が「恋」に変わってしまった人。
幻の近代アイドル史: 明治・大正・昭和の大衆芸能盛衰記 (フィギュール彩)
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戦前から「ガチ恋」ファンは存在したようです。
(というかめっちゃこの本面白そう。読みたい。)
ガチ恋の対象相手として一般的な「アイドル」
「アイドル」の語源は、
ラテン語の「idol(偶像崇拝)」から来ていると考えられています。
元々神や仏など、崇拝の対象となっているもののことを指していました。
日本も最初はアイドルは神的な存在だったのかもしれません。
しかし、時代が進むにつれ、「アイドル」は、本来の神聖な意味とかけ離れていき、
未成熟な可愛らしさ・身近な親しみやすさなどに愛着を示す、
日本的な美意識を取り入れた独自の「アイドル」像が創造されました。
2000年初頭、「アイドル」の概念を壊す「アイドル」が誕生しました。
「テレビやコンサート会場でしか会うことができない」という、
従来の「アイドル」の固定観念を根底から覆し、
アイドルは「会いにいける」ようになりました。
また、お金を投じれば、もっと距離が近づけるようになるアイドルも誕生しました。
そこからアイドルは戦国時代に突入、
有名になる為なら炎上も、「ガチ恋」のファンを増やすことも、
戦略の一つになったのかもしれません。
ファンと演者の近さは、距離感を見失う危うさでもあります。
現に色んな事故が起こってしまっています。
大分前に取り上げた、ねほりんぱほりんでの「地下アイドル」特集回が衝撃的でした。
(正直「りさ子」よりパンチがある話ばかりです。アイドルへ憧れがある方は、読まない事を推奨します )
前置きが長くなりました。
こんな事情がある事を頭にいれながら読むと面白いかもしれません。
さて、りさ子の感想へと戻ります。
まさに舞台を見に行く遠征中に読んだので、
より臨場感があってなかなかに気持ち悪い読後感でした。
読ませる文章というか、気持ち悪くても読んでしまう文章というか。
俳優のtwitterアカウントへのクソリプとか、裏垢とか愚痴垢の呟きが、気分悪くなる位生々しくて、よく研究されてるなあと思いました。
twitterも、推している人にとっては夢のようなツールですが、
ガチ恋を加速させるツールなのかなと怖さを感じました。
「ガチ恋」される舞台俳優の気持ちを描いたのが、
作品の面白さにつながっていると思いました。
失敗しても、不完全でも、未熟でも、
自分の事を1000%肯定してくれる存在が居る事。
金銭的にも、精神的にも支えになる人が居る事。
表現者としてそれを返せるのは、作品やその中の表現でしかなくて、
安心感や嬉しさや恐怖とか、色んな感情と戦う職業でもあるのかなと思います。
ファンと演者の適切な距離感は本当に難しい問題だと思います。
お互いにそのことについて考えながら、応援して、活動することが、
理想の関係に近づくきっかけになるのかなと思いました。
感想、インタビューはこちら
舞台『りさ子のガチ恋♡俳優沼』の演出家インタビュー
松澤 元々僕は、一人の女の子を描こうとはしていなくて。「私はりさ子じゃない」って思う人と、「私はりさ子だ」って思う人って、比重の違いかな? って思ったんです。100%りさ子と同じ人がいるわけはない。でも、100%違うって言い切れないんじゃないかって。
だから、この作品は“自分がどれくらいりさ子だったか”っていう楽しみ方もあるのかなと(笑)。りさ子がしたことは悪いことですけど、「完全な悪」ではないんですよ。
ファンって本当にすごい存在だなって。誰かを応援する力ってすごいと思うんですよね。だから僕はその「力」を尊敬するし、信じる。なくてはならないものです。僕は、ファンの方はなるべく覚えたいなと思っているので、積極的に「認知」をしてコミュニケーションを取っていきたいですね。
僕は俳優とファンって別に一方通行の関係ではないと思うんです。でも、普通の“双方向”とは違う。だから、僕自身でその複雑な関係性について掘り下げてみたくてこの作品が生まれました。
文庫版感想
bookmeter.com
舞台版が 2019年4月に再演が決定したようです。
気になった方は是非見に行ってみてはどうでしょうか
www.finepromotion.co.jp
舞台版(初演)の感想
togetter.com
2.5次元舞台へようこそ ミュージカル『テニスの王子様』から『刀剣乱舞』へ (星海社新書)
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